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青空を見たくない ここにいるとそう思う 曇り硝子から見える空はなんとなく天気がわかる ああ、今日も青空か 曇りの日はやけに落ち着く雨の日もなおさら落ち着く それなのにここにいると青空を感じる日が多い そのたびなぜか胸がズキってなる この感じはあの日と似ていると思う 妻は土日休み自分は土日仕事 仕事に行こうと外に出たとき 青空が広がっていると胸がズキっとする ああ、今日も青空か なんで同じ気持ちにな […]

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馬鹿だった ここに入って自由がなくて何もできなくなった 考える時間はたくさんあるのに今を考えていなかった 自分以外のことを考えていなかったいや、考えようとしていなかったんだ 現実から逃げた自分が耐えきれなくなってしまうから

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馬鹿だった 自分だけ何も知らず自分だけ何も考えず今と過去から目を背けた ひとりのんきに未来を考えていた でも、妻は違っていた ずっと今にいたずっと過去と向き合っていた未来なんて考えられないでいた そんなことに考えが及ばない自分はただの馬鹿だ そんな自分に嫌気がさす

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馬鹿だった 辛いのは自分だけだとそう思ってしまっていた 周りの人がどれだけ傷ついているのかどれだけの人を裏切ってしまったのか考えていなかったいや、考えようとしていなかったんだ ここでは自由がない でも、その代わりに自分が知るべきことから守られているようだ たくさんの人を傷つけてしまった現実から守られているようだ 外に出るのが怖くなった自由を得るのが怖くなった

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こうなる前にどうにかする方法はあったはず 誰にも相談できず一人で抱え込んで追い詰められた 昔からそうだった誰にも相談できず一人で抱え込んだ ブラックホールじゃないんだからその悩みは消えることはないいつか爆発してしまう そうやってためにため込んで爆発した たった一人にたった一言言えればよかった 助けてと

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自分が自分でないように感じることがある 自分を後ろから見ているように自分を上から見ているように自分が自分じゃないような感じがする まるで自分とは関係ないそんな感じがする こんなことになったからなのかそれともずっと前からか自分が自分でない感覚 それはいつから感じているのか

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学生のとき熱い想いを抱いていた こんな大人になってやるこんなすごいことをやってやる そうして今まで生きてきた でも現実はこんなんだ どうしてこうなってしまったのかあの頃の気持ちはどこに行ってしまったのか 探しても見つからない というかここまで生きてきた意味はあるのだろうか 人生の中で苦しみの季節はほんの一瞬 そんな言葉があるけれど本当にそうなのか ここがどん底だと思う だって取り返しのつかないこと […]

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手を汚した 人間の心を持っていないのだろうか 何回も何回も 人間の心を持っていないのだろうか いやどこまでいっても 人間だった ちっぽけな人間だった 倫理観を捨てればなんでもできると思って 一生懸命倫理観を捨てようとしていた 罪悪感と恐怖感に心が押しつぶされそうになっていた そんな自分は嫌になるくらい普通の人間だった そんなになるならしなければよかったのに そこまで追い詰められていた

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たまに思うことがある 隕石でも降ってきて宇宙人でもやってきて太陽が爆発して全て壊れてしまえばいい もう自分の力で自分の人生をどうすることもできなくなった もう大きな力に頼るしかなくなった どうか世界が終わりますように

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あのときああすればよかった このときこうすればよかった ここにいるとずっと考える でも必死に振り払う 何も考えない そうやって逃げないと 後悔の重さに耐えきれなくなってしまうから 後悔していないわけじゃない反省していないわけじゃない ここでひとりでそれに向き合ってしまったら 壊れそうになる壊れそうになる そしてきっと戻ってこれなくなる